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畠山重忠251(作:菊池道人)

 

 脂ぎった帝王である。
 この年、数え二十五歳の後鳥羽上皇は祖父である後白河法皇の野心を受け継いでいるかのようである。
 帝位はすでに土御門天皇に譲ってるが、政治への意欲はむしろこれから盛んになっていくようである。加えて、相撲、狩猟などの武芸を好んでいる。
 この物語より少し後のことであろうが、交野三郎という盗賊を捕らえるにあたり、自ら舟の櫂を手にして武士たちを指揮する程の怪力を示している。それに恐れをなした賊は降伏し、中間に取り立てられた、という話が「古今著聞集」にある。
 歌人としても後世に名を残しているが、歴代の天皇の中でも、武への関心は突出しているといってよいだろう。
これが災いとなるのはずっと後の話ではあるが、この時期は、ひたすらに伊勢で起こった平家残党の反乱に心を砕いていた。
 三月二十一日、院の御所では公卿列座のもと、伊勢での謀反への対策が評定された。
 鎌倉から京都守護として派遣されていた平賀朝雅も呼ばれている。
「朝雅とやら」
「はっ」」
やや緊張した面持ちの朝雅に上皇は、
「その方、伊賀国を知行するように」
伊勢での反乱が拡大する伊賀国での知行すなわち国司の任免権を与えることで、朝雅が追討軍の指揮をしやすいようにするのである。
「有り難きお言葉、恐悦至極に存じ奉ります」
朝雅は深々と頭を下げた。
「かくなる上は、一刻も早く謀反人どもを成敗致すべく、身命を賭す所存にござります。畿内を騒擾させ申し上げる不届き者どもは、この朝雅がおります限りは一人も残すつもりはございませぬ。院におかれましては、お心を強く持たれますよう」
必要以上に声に力を込める朝雅に上皇は、
「朕は剣のないまま皇位に就いたのであるが」
三種の神器のうち、宝剣は壇ノ浦に沈んだままである。剣のないままに即位したことが、上皇の心に陰を落としている。
「しかし、剣はなくとも、逆賊どもを成敗致せば、皇祖もさぞやお喜び遊ばされるかと思うておる」
上皇は心底、朝雅に好意を抱いているようである。
「お言葉痛み入り奉ります。この朝雅、この身こそが院を守護奉る剣と、粉骨砕身致す所存でございます」
大げさな物言いで、周囲の他者の気持ちを高ぶらせるのは、朝雅の得意とするところである。
上皇は目を大きくし、
「よう申してくれた。その方のような者こそが朕の宝ぞ」
 いささか興奮したかのような表情の上皇を見上げながら朝雅は、伊勢での反乱鎮圧こそが自身の飛躍の好機と胸を高鳴らせていた。
 
 翌日、朝雅は二百人ばかりを率いて出陣した。
 しかし、伊勢に入るにも、すでに鈴鹿峠は反乱軍に抑えられており、朝雅率いる追討軍はやむなく美濃国を回らなければならなかった。
追討軍は二十七日にようやく美濃に入った。
 早速、軍議が開かれ、先ずは平基度らが立て籠もる富田(三重県四日市市内)を攻める手筈が整えられた。 (続く)

本作はオリーブニュース http://www.olivenews.net/v3/ にも掲載しております。

作:菊池道人 http://www5e.biglobe.ne.jp/~manabi/3.htm

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