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畠山重忠253(作:菊池道人)

山内経俊は追討軍に加わったものの、当初の不手際で結果的に反乱の規模を大きくしてしまった。
 それゆえに、国地頭を解任されることは避けられない。
 浮かぬ思いのままに自邸に引きこもっていた。
(どうしていつもこうなのか)
頼朝挙兵を前にして、助力を要請に参上した安達盛長に暴言を吐いたことがけちのつけはじめであったが、それでも頼朝の乳兄弟ということで、大目にみてもらっていた。
 しかし、今度ばかりはもう寛恕頂くこともないであろう。
 頼朝もすでにこの世にはいない。
 (全ては己の不徳の致すところか)
居間に胡坐をかいて、 ふてくされた心持ちになっていると、不意に、
「一言、お耳に入れたきことがございます」
いつの間にか、居間に見慣れぬ人が来ている。
 識之助である。
「何奴じゃ」
経俊は咄嗟に太刀を手にするが、識之助は涼しい顔で、
「名乗る程の者ではございませんが、先に謀反を起こした平家側の者にござます。山内どのが捕らえられました員部の行綱どのはそれがしどもとは一切関わりはございませぬ。その事だけを申し上げに参りました」
識之助は一礼するや、すっと立ち上がり、背中を向けると、部屋を出ていく。
「誰かあらん」
経俊は大声を出す。
 そこへたまたま真正がやって来た。
「今、出ていった者を捕まえろ」
「はっ」
真正は素早く廊下へ出ると、識之助が庭へ出たのを見つけた。ちらりと目にした横顔に見覚えがある。
「そこの者、待たぬか」
が、その声には反応せずに識之助は塀に近づくや、ひらりと跳躍した。
 真正が驚いてる間に、空中で一回転し、塀の外へと消えた。
 真正は識之助の恐ろしいまでの早業を見せつけられるばかりであった。

「今の者が行綱が見逃した伊勢三郎の残党です」
真正は経俊に報告する。
「そうであったか:」
経俊は苦虫をつぶしたような表情をしてみせるも、
「しかし、それでも行綱の恩を忘れずに、此度の平家残党とは関わりがないことを一身を顧みずに報せに来るとは、不逞の輩とはいえ、見どころがあるではないか。わしも頼朝公に無礼の段をお許し頂いた身。あの者の心意気に免じてやるのも亡き頼朝公への恩返しぞ。それに、わしはいずれにしても、お役御免は免れぬ。この期に及んでつまらぬ忠義立ては無用の事だ」
  
 囚われの身となっていた行綱は平家残党の謀反とは無関係であったということで釈放された。
山内経俊は伊勢の国地頭の任を解かれ、代わりに平賀朝雅がその任に就くことになる。
(続く)

作:菊池道人 http://www5e.biglobe.ne.jp/~manabi/3.htm

本作はオリーブニュース http://www.olivenews.net/v3/ にも掲載しております。

本作を初めてご覧になられる方はこちらをhttp://historynovel.hatenablog.com/archive/2014

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